Jリーガーの三浦知良こと三浦カズ選手が、
自身のホームページに、コロナウイルスに関して
投稿した記事を紹介します。
それでは、ご覧ください。
モラルの線引き
新型コロナウイルスの感染拡大で、僕らは30日近く、試合の巡ってこない日々を過ごすことになった。
アスリートはずっと気を張り詰めたまま、ピークのままでいられ続けるものではない。試合をして、休み、再び状態を上げていき試合前でいったん負荷を緩め、本番で100%を出せるように合わせていく。試合というターゲットがないと、どこでギアを上げ、下げるかの波をつくりづらいんだ。
リーグが開幕し、身も心もできあがったところで中ぶらりになった。もう一度シーズン前へ戻って体を作り直すわけにもいかず、気の持ちようも難しいね。
いま僕らが置かれている状況は、9年前の東日本大震災のころと似ているかもしれない。あの時も感じたことだけど、そこではスポーツが「なくてもいいもの」に思えてくる。まず人命を守る、マスクなど必需品を行き渡らせる。比べれば自分たちの価値ははかなく、自粛に次ぐ自粛へと傾くのも無理もない。
それでも時がたち、不安も拭われたならムードも変わってくるはず。健康なら元気に体を動かそう、遊んだっていいんだ、と。スポーツを通じて競い合い、勝ち負けに喜び、泣き、怒って、笑う。そうした楽しみも生きるうえでは必要だろうから。閉塞したままではいられず、明るさを求めたくなるのが、生き物としての人間の本質じゃないのかな。
試合がなくなり、生じたオフに家族と食事へいく。「外出自体を控えて」との声に意を留めながら。でも大勢が集まりはしない場で、必要な注意を払いつつ、健康な人同士で誕生日を祝うことまでも“悪い”のか、と息子に問われると僕も正解が分からなくなる。
マスクを転売できるのは高値でも買い求める人がいるからで、品薄の背後には必要以上に買い占める人がいる。それらはなじるべきことというより、人間に備わる残念な本質なんだろうと思う。誰でも切羽詰まれば買いだめをしかねず、もうけの誘惑に負けかねない。だから自分のこととして考えてみたうえで、何は控えるべきで、何はOKか、判断していきたい。
ともかく今は取り乱さず、自分にできることを。しっかり手を洗う、せきエチケットを守る、キスは1日10回まで、ではなくて控えめにするとか。全面禁止となると人間には難しいだろうからね。こんな時でも、明るさまでは失わずにいたい。
出典元:“サッカー人として” 2020年03月13日(金)掲載
日本の力をみせるとき
クラブハウスが閉鎖され、グラウンドは使えず、利用していたジムも1カ月近く休止している。自分で所有している器具で最低限の運動をする日々が続く。
自分が新型コロナウイルスにかかることも、他へうつすこともあってはならない――。プロスポーツ選手は誰でも、そんな大きな責任とプレッシャーと隣り合わせの生活を送っていると思う。クラブに、対戦相手に、試合開催に。自らが及ぼす影響が大きすぎる。
屋外を走りたくなっても、感染するかもと控えてしまう。ほんの3分ほどでもいったん家の外に出たら、何に触れていなくても手をゴシゴシと洗う癖がついてしまった。うちの息子たちは街で遊びたい年ごろだけど、家族にも同レベルの緊張をしいてもらっている。
「え、行くの?」。ある同僚は奥さんにとがめられつつ練習へ出ていた。4月初旬、1カ月先にリーグが再開する予定の一方で、感染への危機感が増していた時期のことだ。一部屋に40人近くが集まるミーティングのさなか、僕も声を上げた。「緊急事態宣言も出そうなときに、こうして集まって、練習していていいの?」。選手の大半が同じ思いだったという。自らをリスクにさらしてでも、命や社会機能を守るべく奮闘する方々がいる。休みたくても、休めない人がいる。でも選手は、そうじゃない。
いつ電話しても満席だったなじみの繁盛店は、店の維持さえ難しい状況に追い込まれた。我慢は、先が見えてこそ我慢できるもの。娯楽や明るい話題も楽しめず、それどころでない人々がたくさんいる。そんな状況で、僕らが「何か希望を」などとはいえない。
すべての行動が制限されるわけでない緊急事態宣言は「緩い」という声がある。でもそれは、日本人の力を信じているからだと僕は信じたい。きつく強制しなくても、一人ひとりのモラルで動いてくれると信頼されたのだと受け止めたい。
戦争や災害で苦しいとき、隣の人へ手を差し伸べ助け合ってきた。暴動ではなく協調があった。日本にはそんな例がたくさんある。世界でも有数の生真面目さ、規律の高さ。それをサッカーの代表でも日常のピッチでもみてきた。僕らは自分たちの力をもう少し信じていい。日本人はこういうとき、「やれるんだ」と。
「都市封鎖をしなくたって、被害を小さく食い止められた。やはり日本人は素晴らしい」。そう記憶されるように。力を発揮するなら今、そうとらえて僕はできることをする。ロックダウンでなく「セルフ・ロックダウン」でいくよ。
自分たちを信じる。僕たちのモラル、秩序と連帯、日本のアイデンティティーで乗り切ってみせる。そんな見本を示せたらいいね。
出典元:“サッカー人として” 2020年04月10日(金)掲載
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カズ選手の言葉、
こころに刺さりました。
日本だからできないこと。
それを日本人だから乗り越えることができる。
そう信じています。
勇気がもらえる言葉です。
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